子どものあいさつ [五嶋 靖弘]

孫の小学校の入学式に出たときのことです。孫の手をひいて校門をくぐったら、6年生らしき女の子たちが駆け寄ってきて、ちょっと腰をかがめ、「おめでとう!」とにこにこしながら、声をかけるのです。孫はそれを見て、恥ずかしそうにしていましたが、6年生のやさしい眼差しに感じ入ったのでしょう、「ありがとう」と声を返しました。
 驚いたのは、つぎです。さっと腰を伸ばして、今度は、わたしの方を見上げて「おめでとうございます」と、お祝いのことばを述べてくれたのです。わたしもお礼の言葉を返しましたが、心がいっぺんに洗われるような思いになりました。そして、女の子たちは、「受付はあちらです」と、学校は私たちに任せておいてくださいと言わんばかりの頼もしさで、校舎の入口を示してくれました。
 事前に先生方に指導を受けているのでしょうが、しかし、そこにはいやいややっているという雰囲気はまったくありません。楽しそうに心からやっているのです。いじめがこの学校にもあるのかどうか知りませんが、少なくともこの学校にはそれが少ないのではないか。上級生のあいさつからそう感じました。
 それから式では校長の話をうかがったり、2年生全員による歌やリレー式の歓迎の言葉を聞いたりしましたが、あの最初のあいさつに勝るものなし、そんな印象の入学式でした。

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